序章・「黄帝」

      
1@黄帝像(『三才図会』)     A黄帝陵の牌
       「漢字の歴史」(文献109より転載)

 「黄帝」は印文の「太上老君」老子をさらに溯る中国古代の聖帝で、本書に欠くべから

ざる道教の開祖的存在です。したがって本書を進めてゆくには、この序章でどうしても紹

介しておかなければなりません。

 そこで簡単に紹介させて戴きます。

 「黄帝」は太古の五帝の一人で紀元前2千5・6百年頃に約百年間、帝位にあり、姓は

「公孫」「軒轅」と号す伝説の聖帝でした。

 広成子という仙人より多大な教えを授かり、その後公明正大な治世を行い、中国の医薬・

文学・音楽・暦算などを創始した“有徳の帝王”として伝えられています。

 「黄帝」は昇天する時、天印の紐「獅子」に在る“顎鬚“と同じ髭を垂らした「龍」が

天より迎えに来たといわれています。

 ところで「黄帝」の様な善政の時代、即ち“有徳の帝王”の時代に“言葉”を話す神獣

「白澤」が現れるとされますが、恐らく、この「寶」制作を勅令した皇帝は、伝説の「黄

帝」と自らをオーバーラップし、“有徳の帝王”たらんと願ったのではないでしょうか。

 『大漢和辞典』によれば、この「白澤」の名は“獅子”の異名とあります。

 まさにこの紐の獅子は、この伝説の神の使いであり、守護神「白澤」を創造したもので

はないかと考えられます。そして獅子の色である「白」の焼き上げは、この「白澤」の白・

神の色です。また黄帝と同格の「老子」は仙人でありその象徴の色でもあります。

 さらに印面の黄色は「黄帝の色・黄河・中華の色」であり、この黄帝の史である「蒼頡」

は史上最初に「文字」を考案したとも伝えられています。

 この文字神を祭る意味でも、神噐は「印」でなくてはならなかったと想像されるのです。

 本書では、この神獣「白澤」を全編、獅子又は白獅子そして、私が名付けた“アポロ”

と呼称しながら進めて行くことに致します。