第1章3・形状と意匠


古来より中国人は「天円地方」という宇宙観を持っていました。

つまり天はドーム状の弧を描く「円」大地は四角な方形です。この点を念頭に

おいて獅子の頭、正面の見ると、美しく正確な円をなしています。

そして「地」に配当される印台は角・「方形」に作られています。この「地」は

当然「中華」で、世界の中心を意味し、天子である皇帝の“天下”のことです。獅

子は天の守護神・神の使いであり、また天子・皇帝を警護する守護神です。

四方八方の“邪気”をはらう“完璧の構え”寸刻も揺るがす事のない“万全の気”

をもって皇帝の天下を守護しているのです。

前項2で述べた通り、印面の地が黄色であることは、通常我々が想像する、中国皇

帝の象徴「龍」ではなく、道教の開祖黄帝伝説に由来する神徒、言葉を話す獅子「白澤」

でなくてはなりません。

以上、「寶」は方形の印であること、紐が「白澤」獅子の意匠であることの必然が

生じるのです。

これより神獣「白澤」は、本書「寶」の航海を、見守ってくれるでしょう。