1章21・「勅令」


 この第1章で「寶」に秘めた大宇宙の、一応の全貌をみることができました。

 ここまでの調べで、この「寶」は間違いなく道教の宝印であり皇帝の「寶」と推定され

る神噐であり、想像を遥かに越えた完璧の「寶」であることが推定されました。しかし、

この第1章は、太陽系と同じく、あくまで大宇宙のほんの一部分です。

 本書は、太極宇宙に合わせるべく、序章「○」混沌から、陰陽「二」気が生じ、全編は

「五」行の相生相剋の循環を経て「九」章に分けられました。

 したがって、この第1章は21の項(爻)即ち「二」と「一」陰陽の數に配当しました。

 今は第1章・21爻「二」と「一」陰陽が生じた本書の始まりです。

 道教の開祖・老子は「玄聖」と称され、六画の「老」字は天において、宇宙の遥か北斗

の方角、夜空に光る「北極星」を象し、「地」にあっては陰極、大地及び天下の中心、万物

始生の根元を象しております。「老」の六画は陰極の数で、母なる大地、陰性象形の数で、

その根源の象徴です。「天地未明」・「陰極象形数」、「玄」の数であります。即ち「老」は、

天地一体の太極宇宙の中心に鎮座しているのです。

 道教はこれを正に「玄」と称し、天地万物・森羅万象を生みだす「玄牝之門」又「衆妙

之門」と称しました。

 この「玄」の門、幽玄の遥か彼方の深淵に天地創造主、道教の最高神、「玄始天尊」が宿

ると言います。

 この「玄」の門は「寶」への登龍門であり、当然門には篆刻で印した龍が守護の任にあ

たり、扉の中央正面には光の文字で「老」と記され、表裏一体の扉の内側には「玄」と

大書されている筈です。

 『玄』は『大漢和』に、遠い、深いに通じ。北方を指すとあります。

 「玄都」は神仙の居所。

 「玄象」は天の象

 「玄黄」は天地の色「黒」と「黄」印章、陰刻凹、陽刻凸です。

“表裏一体”で「老」六画の裏は「玄」であり、この「玄」は「五」画、即ち天子“皇帝

の數位”なのです。

 正に「老」の文字が書かれた扉の裏側には、「玄」の金看板が揚げられ、その皇帝は真北

の正面正殿に“正座”しています。

 この「一文字」の「玄」は、“道の主”「天子」である「皇帝」のイニシャルです。

 大唐の皇帝で「道主皇帝」に就任した開元の天子、大唐の系図・図

@「玄」の名の付く皇帝、それは「玄宗皇帝」ただ一人です。

 正に彼こそ、「寶」制作を命じた皇帝なのです。

 この第1章・13.15で推理した新時代の年号「開元」の「道主皇帝」、そして天より

戴きし「寶」“天寶元年”と瑞祥改元の令を発した皇帝です。項末Aに戴く大書『勅』の一

字は玄宗皇帝、直筆の書であります。これより、『勅』は発動され、道は明確に示されまし

た。

 航路は約1300年前の大唐「花の都」にむけて一路邁進です。神仏、先祖の御加護を

祈るものです。